私はひきこもりの訪問支援をカウンセラーとしておこなっていますが、外出同行の支援について今回は書いてみたいと思います。
訪問支援は、ひきこもりの本人が暮らす自宅を訪ねて、本人にお会いできれば、家の中でお話を聴いたり、一緒に時間を過ごします。もしお会い出来ない場合は、本人を尊重して決して無理に会おうとはせず、まずは家族と面会を重ねます。
私が支援している当事者は、まだ日常的に外出が困難な状態の方がほとんどなのですが、みんな外に出るきっかけを探している最中の人たちです。
私は訪問によるカウンセリングを続けながら、少しずつ本人と信頼関係を築き、次のステップとして、一緒に外出をする機会を作っていきます。
当事者が外出を躊躇うのは、かならず理由があります。その理由、原因を理解し、明らかにしてから本人に丁寧に説明をして、本人の意思を確認してから行動に移していくというプロセスを踏みます。
外出が難しい理由のひとつには社交不安も含まれているケースがあり、電車やバスといった公共交通機関もまだ利用することが出来ません。
そこでまず出来るのは、近隣の散歩に一緒に行くことです。そして、その次に私が考えたのが、レンタカーを利用しての中距離ドライブです。私は車を所有していないので、家族の了解を得て、レンタカーを予約します。
車のドライブにはいくつもの利点があるのです。
まずひとつは、外界と仕切られた小さな個室の空間なので、移動しながらプライベートが保たれること。部屋と同じように1対1で自由に話が出来ること。そして、運転席と助手席が向かい合うのではなく、同じ方向で同じ景色を見ながら、会話を続けられることです。
走りながら、どんどん周りの景色が変わっていくことも、日常とは違う新鮮な変化をもたらしてくれます。
先週末は支援をしている若者と、立川市の国営昭和記念公園へ初めてドライブに出かけました。
小一時間のドライブの後、広大な公園をゆっくりと一緒に散策しました。平日の公園は人も少なく、ストレスもかかりません。でも当人にとっては、見知らぬ人とすれ違うだけでも疲れたようです。帰りはわざと往路とは違う道を走り、窓越しの景色を眺めながら、おしゃべりを楽しみました。
このドライブによる外出同行は、環境療法であり体験療法のようなものかもしれません。ドライブ中に会話や音楽・ラジオを楽しめるのも大きな魅力で、リラクゼーション効果も期待できます。レンタカー代や駐車料金などは、まとめて家族にご請求しています。
ドライブの訪問支援は、社会に出るためのステップのひとつであり、本人の状態に変化が見えてきたら、また次の新たなステップを考えています。
一歩ずつ一歩ずつ、本人の意思と意欲、力を感じながら、一緒に歩んでいきたいと思います。
カウンセリングサロンぱすてる
傾聴カウンセラー 喜々津博樹