東京レインボープライド2019のブースで、とても気になっていた絵本を購入しました。
『ふたりママの家で』
(原題:In Our Mother's House)
パトリシア・ポラッコ 絵と文
中川亜紀子 訳
サウザンブックス社(2018年)
この絵本に登場するのは、ふたりのママ、ミーマとマーミー。
女性同士のカップルです。
二人は生まれたばかりの女の子を家に連れてきて、育て始めます。
女の子には、弟のウィル、妹のミリーができますが、子どもたちは肌の色、髪の色がそれぞれ違います。
ふたりのママと子どもたちの生活が、女の子の「わたし」の視点でゆっくりと綴られていきます。
暖炉の前のおしゃべり、手作りのハロウィーン、裏庭のツリーハウス、ご近所パーティー…
「ミーマとマーミーは、わたしたちを本当に大切にしてくれた。それを感じない日はなかった」
同性カップルのママたちの子育ては、父と母による子育てと何ら変わることなく、血のつながっていない子どもたちは、のびのびと自由に育っていきます。
しかし、この家族をよく思わない人物が登場します。近所に住むロックナーさん。ママと子どもたちをいつもジロリとにらみつけてくるのです…
このロックナーさんが何度も登場してくるところが、この絵本のポイントのひとつになっているような気がします。
作品を読んでいると、「ふつう」とは何なのか、「ちがい」とは何なのかを、まったく血のつながらないひとつの家族を通して、想いを巡らせることが出来ます。
作者のパトリシア・ポラッコ自身が、言葉や宗教、肌の色の異なるさまざまな人たちの間で育ち、「人は同じだと共感したうえで、ちがいを恵みと受け止められるように」物語を書いてきたと語っています。
『ふたりママの家で』は、セクシュアル・マイノリティ、LGBTについて、あらためて知るきっかけになることでしょう。
そしてこの作品は、クラウドファンディングにより翻訳出版されたとのこと。
新しい出版形態が出てきていることに時代の変化を実感し、一方で価格設定を高めにせざるを得ない事情についても、考えさせられます。
サウザンブックス社の出版する書籍にこれから注目していきたいと思いました。
サウザンブックス社
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