青木ヶ原樹海は富士山の北西部に位置する広大な森林地帯です。
太古からの原生林に覆われた、とても美しい森ですが、自ら命を絶とうとする人が独りで訪れる地でもあります。
昨年2021年の都道府県別の自殺率(人口10万人あたりの自殺者数)で、一番高い県はご存知でしょうか。
警察庁が発表した、昨年の死亡発生地による自殺率のトップが、青森県と山梨県でともに23.7人でした。(東京都は16.3人)
山梨県は発生地ベースによる自殺率では、毎年高い数字が出ており、それは富士河口湖町と鳴沢村にまたがる青木ヶ原樹海で命を絶ち、そこで発見される人たちが毎年いるからです。
私が樹海での自殺に強い関心を抱いたのは、忘れもしない今から12年ほど前、NHKの番組で、樹海での自殺防止活動が特集され、自殺未遂をした男性が駐車場で警察に保護されている様子を垣間見た時でした。
パトカーの座席に腰かけ、首をうなだれ、警察官に恫喝されている男性の、モザイク越しの姿が今も目に焼きついて離れません。
樹海の自殺者があまりにも多いことを受けて、地元の自治体、関係機関が動き、毎日巡回や声かけの活動をしていることを知りました。
私もカウンセラーとして活動を始める中で、まずその根幹にしたいと思ったのが、自殺を未然に防ぐ、いのちをつなぐ活動を実践することでした。
樹海を訪れるのは今回で3回目になります。
東京でレンタカーを借り、中央自動車道を走って鳴沢村の富岳風穴の駐車場に車を停めます。
ここには樹海への遊歩道の入口があり、しばらく歩いていくと原生林の中に一本道がずっとのびています。
もし、それらしき人に出会った場合は声をかけ、会話を交わし、話を聴きます。拒まれたり、無視されるケースだってあるかもしれません。
そして状況によっては具体的な行動、支援が必要になるかもしれません。
私が樹海を歩く理由はそれだけではありません。この静寂に包まれた、あまりにも美しい原始の森をゆっくりと歩き、その自然の懐に身を置いていたい、じかに触れていたいという思いがあります。
今回も半日、遊歩道を歩き、時に道を外れて苔むした溶岩台地の上を歩いてみましたが、滞在時間中に企図者に出会うことはありませんでした。
帰路は富士五湖のひとつである西湖のほとりの温泉に浸かり、ゆっくりと下道を走りながら、東京に戻りました。
この活動は季節を変えながら、これからも定期的に続けていきたいと思っています。
カウンセリングサロンぱすてる
傾聴カウンセラー 喜々津博樹