先日18日、山梨県の富士山麓、青木ヶ原樹海をおとずれてきました。
樹海を訪ねた目的は、この地に自殺をしようとやって来た人に声をかけるためです。
私が富士樹海の自殺に関心を強く抱いたのは、もう10年以上前になるでしょうか、樹海での自殺者が多くなっており、地元の人たちが声かけなどの防止活動に取り組んでいる様子がNHKの番組で紹介されたのです。
その時の、自殺未遂で警察に保護されたひとりの男性の、パトカーの座席に座り、モザイク越しのうなだれた姿が目に焼きついて離れませんでした。
今も地元の自治体が、毎日パトロールをしているそうですが、カウンセラーとして、いのちをつなぐ、自殺の未然防止活動をしている身として、自分も現地に向かいたいと思いました。
以前に訪ねたのが2019年の年末。その後コロナが広まり出し、なかなか訪れる機会を得られずにいましたが、感染者がようやく減ってきた今、行動を起こそうと思いました。
東京からはレンタカーを借りて、中央自動車道を河口湖インターで降り、鳴沢村へ向かいます。
今回は、最初に野鳥の森公園の駐車場に車を停めて、そこから延びる遊歩道をまず歩いてみました。
静かな森の道ですが、しばらく行くと中学生の集団に何度もすれ違い、賑やかになりました。あたりは溶岩が織りなす原生林の森ですが、人が多くなると雰囲気がまったく変わります。
1時間ほど歩いて駐車場に戻り、一路、前回も車を停めた富岳風穴に移動しました。
富岳風穴にはバス停、売店、広い駐車場があり、いわば樹海に入るゲートのような場所で、平日でも観光客の姿が見られました。
入場料を払う風穴の入口を横目に、樹海の遊歩道を進んでいきます。
しばらく歩くと、まったく人の気配はなくなり、静寂そのものの森の中を進むようになります。
私はこの雰囲気こそ、青木ヶ原樹海本来の姿なのだといつも感じます。
あたりは苔に覆われた起伏のある溶岩台地と背の高い原生林がずっと広がっています。
この静かな一本道を、これまでどれだけの人が死のうと考え、ひとり歩いていったのだろうと思いを巡らし、立ち止まっては耳を澄ませていました。
時折、歩道を外れて森の中に足を踏み入れてみましたが、どこまでも奥に広がっている誰もいない空間に身を置くと、やはり怖くなって、引き返したくなります。
この日はそれらしき人に出会うことはなく、駐車場に戻り、帰路は富士五湖の西湖、河口湖のほとりを走りながら、夕暮れの富士山を眺めつつ、東京に帰りました。
また季節を変えて、樹海には定期的に訪れたいと思っています。
カウンセリングサロンぱすてる
傾聴カウンセラー 喜々津博樹