ひきこもり訪問支援 ぱすてる

自分らしく生きるためのカウンセリング

からふらっとという居場所

ひきこもり支援の活動をしていて、私がよく参加しているのが、地域の家族会です。

ひきこもりのお子さんを持つ親や兄弟姉妹の方々が集まる会ですが、ひきこもりに近い状態だったり、生きづらさを抱えた方が、その家族会に参加していることもあります。

 

私がよく顔を出している東京・国立市の家族会にも、そんな当事者性を持った人たちが来ていました。

そして、その人たちが同じ国立市で居場所活動をしており、それが「からふらっと」という名前の居場所です。

 

居場所は日本各地に作られていて、そこに出入りするのは、主に当事者や経験者、生きづらさを感じている人たちです。病気を抱えて療養中だったり、回復途上の方もいます。働くことはまだ出来ないけれど、自分と同じような人とつながりを持ちたい、バイトをしているけれど、居場所に安心感や安全を感じている人が、自由に利用できる空間です。

 

私のような支援者の立ち位置にいる者は、運営側でない限り、居場所に入りにくいのですが、からふらっとの世話人をしている人たちとは家族会を通じて、ご縁が生まれました。

当事者の人たちとじかにふれ合い、生の声を聴きたい…そんな気持ちで、からふらっとに参加したいと伝えたら、こころよく受け入れてくれました。

 

国立市のひきこもりの事業は、社会福祉協議会がその中心を担っていて、家族会、親の居場所、そしてからふらっとの運営窓口になっています。

活動場所は社協が整備をして、福祉会館や市内の農園を開放し、からふらっとのメンバーは、定例会をおこなったり、農園での栽培、収穫作業に汗を流しています。

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私は月2回開催される定例会にたまにお邪魔するようになりました。

平日の午後、和室の広いスペースで、自由に過ごすことが出来ます。

雑談をするもよし、本を読んだり、寝転ぶもよし、社協の職員(コミュニティソーシャルワーカー)の方もいるので、個別に相談をすることも出来ます。メンバーが企画したワークショップを開催することもあるとか。

 

まだ数回しか参加していませんが、私が驚いたのは、参加者の多さと、かなり遠方から来ている人が結構いることです。

年齢層は幅広く、女性の参加者も多くて、親子で参加したり見学に来ている方々もよく見かけます。

とにかく賑やかで、声が部屋に響きわたり、みんな自分たちの居場所として楽しんでいる様子がよくわかります。

初めて来た人には、常連の人がスッと横について話し相手になる光景が見られます。そして、世話人の人たちが全体に気を配り、声をかけて動いています。

 

私もカウンセラーや支援者という立場などすっかり忘れて、同じ仲間として利用し、楽しませてもらっています。からふらっとにやって来る人は、ゲームをするより、会話を楽しみたい人が多いのかなと感じています。

ひきこもり経験者の人たちに触れてハッとするのは、澄んだ綺麗な瞳をしている方が多いことです。社会の余計な空気に触れていないからか、とても純粋な心を持った人によく出会います。

 

それぞれ色々な悩みを抱えながらも、自ら居場所を求めてやって来る人たちと、ひとりの仲間としてこれからも触れあっていけたらと思います。

 

カウンセリングサロンぱすてる

傾聴カウンセラー 喜々津博樹

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青木ヶ原樹海をたずねて

4月28日、山梨県青木ヶ原樹海を歩いてきました。

青木ヶ原樹海は富士山の北西部に位置する広大な森林地帯です。

太古からの原生林に覆われた、とても美しい森ですが、自ら命を絶とうとする人が独りで訪れる地でもあります。

 

昨年2021年の都道府県別の自殺率(人口10万人あたりの自殺者数)で、一番高い県はご存知でしょうか。

警察庁が発表した、昨年の死亡発生地による自殺率のトップが、青森県山梨県でともに23.7人でした。(東京都は16.3人)

山梨県は発生地ベースによる自殺率では、毎年高い数字が出ており、それは富士河口湖町鳴沢村にまたがる青木ヶ原樹海で命を絶ち、そこで発見される人たちが毎年いるからです。

 

私が樹海での自殺に強い関心を抱いたのは、忘れもしない今から12年ほど前、NHKの番組で、樹海での自殺防止活動が特集され、自殺未遂をした男性が駐車場で警察に保護されている様子を垣間見た時でした。

パトカーの座席に腰かけ、首をうなだれ、警察官に恫喝されている男性の、モザイク越しの姿が今も目に焼きついて離れません。

 

樹海の自殺者があまりにも多いことを受けて、地元の自治体、関係機関が動き、毎日巡回や声かけの活動をしていることを知りました。

私もカウンセラーとして活動を始める中で、まずその根幹にしたいと思ったのが、自殺を未然に防ぐ、いのちをつなぐ活動を実践することでした。

 

樹海を訪れるのは今回で3回目になります。

東京でレンタカーを借り、中央自動車道を走って鳴沢村富岳風穴の駐車場に車を停めます。

ここには樹海への遊歩道の入口があり、しばらく歩いていくと原生林の中に一本道がずっとのびています。

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もし、それらしき人に出会った場合は声をかけ、会話を交わし、話を聴きます。拒まれたり、無視されるケースだってあるかもしれません。

そして状況によっては具体的な行動、支援が必要になるかもしれません。

私が樹海を歩く理由はそれだけではありません。この静寂に包まれた、あまりにも美しい原始の森をゆっくりと歩き、その自然の懐に身を置いていたい、じかに触れていたいという思いがあります。

 

今回も半日、遊歩道を歩き、時に道を外れて苔むした溶岩台地の上を歩いてみましたが、滞在時間中に企図者に出会うことはありませんでした。

帰路は富士五湖のひとつである西湖のほとりの温泉に浸かり、ゆっくりと下道を走りながら、東京に戻りました。

この活動は季節を変えながら、これからも定期的に続けていきたいと思っています。

 

カウンセリングサロンぱすてる

傾聴カウンセラー 喜々津博樹

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ゲートキーパー養成講座を受けて

2月末から3月初旬にかけて、地元の練馬区で催された「ゲートキーパー養成講座&フォローアップ研修」に参加しました。

ゲートキーパーの講座は、自殺防止をカウンセリング活動の原点にしている自分にとって、ぜひ参加したいと思っていた講座で、そのタイミングをこの春にようやく掴むことが出来ました。

 

ゲートキーパーとは「いのちを守る門番」、つまり自殺を未然に防ぐために、悩みを抱える人に身近に寄り添い、支援する人のことです。

海外でも自殺対策として広く使われている言葉ですが、日本では厚生労働省をはじめとして、主に行政・公的機関で使われている言葉で、まだまだ一般に浸透している感じはしません。

ゲートキーパーは資格や職業名ではなく、また支援に携わる人だけが名乗るものでもなく、誰でもその内容と役割を知り、ゲートキーパーとして行動することができます。

 

日本では、2006年に自殺対策基本法が制定され、自殺が個人だけの問題ではなく、心理的に「追い込まれた末の死」であり、社会の問題であることを国が明確にしています。

2007年には自殺総合対策大綱が作られ、その中にゲートキーパーの養成も施策として掲げています。

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今回私が参加した練馬区の講座は、2回にわたり行われ、初回は入門編として、ゲートキーパーの具体的な役割、傾聴の基本を簡単なワークで学びました。

2回目は実践編(フォローアップ研修)として時間を拡大し、事例の紹介やゲートキーパーとしての心構え、対応方法を学び、少人数でのロールプレイもおこなわれました。

 

自殺対策については私自身、さまざまな本や資料に日頃から目を通していますが、このような講座に参加するメリットは、まだまだ自分が知らなかった知識や情報に触れることが出来て、ネットではわからない生きた知見を得られることでしょう。

とても身になる体験でしたが、行政の講座ということもあり、平日昼間の開催、参加者の大半はご年配の女性であり、若者・男性が非常に少ないことは気になりました。

 

2021年の1年間に日本で自殺で亡くなった方は、21,007人。毎日60名近くの方が自ら命を絶っています。

対して、交通事故で亡くなった方は、2,636人。自殺者の約8分の1です。

 

ゲートキーパーは、専門家ではなく誰もがなれる、この社会にとても身近で必要な人間です。

あなたもぜひ、ゲートキーパーに。

 

カウンセリングサロンぱすてる

傾聴カウンセラー 喜々津博樹

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自分と深く向き合う時間〜カウンセリング体験記のご紹介・第6回

ぱすてるのカウンセリングをご利用された方が、ご自身のセッションについて綴る「カウンセリング体験記」。

第6回目となりますが、カウンセリングをリピートしてご利用されていた方が、文章を寄せてくれました。ぜひお読みください。

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全てを否定せずに受けとめて聴いてくださり、話していて安心感がありました。

私は、普段の生活の中で相手と会話する際、これを言っても大丈夫かな?と何を言うにも頭の中でまずは考えてしまうのですが、喜々津さんとのカウンセリングの時間は何を話しても大丈夫だと安心して気持ちを吐き出すことができました。

普段誰にも言えないようなこと、自分でもこんなに話したのいつぶりだろうと言うくらい話してしまったなと自分自身感じるほどでした。(笑)

だからこそ、自分はこんなことを感じていたんだ、悩んでいたんだ、こんなにも苦しかったんだ、と自分を振り返り深く向き合える時間になりました。

上辺の言葉ではなく、私のことを思って、寄り添いながらひと言一言を丁寧に話してくださる印象があり、とても嬉しかったです。

また、驚いたのは、前回のカウンセリングの内容を細かく残してくださっていたことです。

自分でも忘れていたことを記録に残してくださっていたおかげで、過去と現在の変化がわかりました。

記録を振り返りながらのカウンセリングも、より実りある時間になりました。

 

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どうもありがとうございました。

この体験記は、守秘義務によって開示できないカウンセリングを、クライアントご本人が語ることで、より身近に感じてもらおうと企画したものです。

カウンセリングがどんなものなのかを知る機会のひとつになれば、幸いです。

 

カウンセリングサロンぱすてる

傾聴カウンセラー 喜々津博樹

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気持ちを言葉で伝えようとすること

先週、地元の練馬区春日町で開催された「生きづらさ当事者たちとの本音(ガチ)トーク」に参加しました。

15歳から49歳までの就学や仕事に就いていない人たちの支援機関である、ねりま若者サポートステーションの利用者が、地域の人たちに向けて自分たちの体験や思いを語るイベントで、昨年に引き続き、第2回目の開催でした。

 

今回登壇されたのは、ひきこもりの経験や生きづらさを抱えて生きてきた4名の若者たちで、うち1名は職場でコロナウイルスの感染者が出たため、急遽音声での参加になりました。

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ひとりずつマイクを握り、ずっと立ちっぱなしで用意してきた原稿を手に持ちながら、話してくれました。

具体的な内容はここに記すことは出来ませんが、これまでのつらい体験、不登校、親子関係、その時々に感じてきた気持ちを自分の言葉で表現し、初めて会う人たちに一生懸命に伝えようとしている姿がとても素晴らしいと思いました。

登壇した人の中には、うまく伝えられずに短い時間で終了したり、質問によく答えられない人もいましたが、それもひとつのかけがえのない体験になっていくのでしょう。

 

今回登壇されている方から、参加者に向かって、思いがけない問いかけ、自分たちの今の社会を根本から見つめ直すような発言もありました。

 

私はひきこもりや生きづらさに寄り添う活動をしていて、このような地域のイベントに関心があって参加しましたが、仕事で来ているという感覚はなく、1人の市民、同じ人間として、今を生きる若者たちの本音、気持ちに触れていたい、あたたかく寄り添っていきたい、という感覚でした。

 

またぜひ参加したい、さまざまな多様な人たちの声を聴きたいという思いを胸に、会場をあとにしました。

 

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喜々津博樹

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クリスマスに本を贈る

児童養護施設で暮らす子どもたちへ、クリスマスに本をお届けしたい。

秋の終わり、そんな思いが湧き上がりました。

中古品ではなく、新品の本を子どもたちに手にとってもらいたい。

これまで、私が読み終えた絵本や買い集めたサイン本を都内の児童養護施設に送っていたのですが、今年は本屋さんで購入した新品の作品を送りたいと思ったのです。

 

それなら私が1人で選ぶのではなく、色々な方がお薦めする書籍を集めた方が面白いんじゃないか、さまざまな作品が集まり楽しそうだ、とひらめきました。

早速Twitterで、クリスマス企画と題して「あなたが子どもたちに楽しんでもらいたい本のタイトルを1冊教えてください」と投稿しました。

対象年齢は4歳から18歳。書籍は、絵本、図鑑、読みものなど。

すると、わずか2日間のうちに10名以上のフォロワーの方々からリプやDMでご連絡をいただき、おすすめの本をご紹介いただきました。

中には、この本を届けてほしいと、自ら本を2冊ご購入されて私に託してくれた方もいました。

 

ご紹介いただいた本のリストを作って、書籍を買い求めます。

私がこの企画で決めていたことは、大手の通販サイトではなく、町の本屋さんや本屋さんが運営するネット書店で購入することでした。

本屋さんで働く人たちに少しでも利益が渡って欲しい、本をまとめて購入することで、たとえわずかでも経済を回していきたい、という気持ちがありました。

 

私が購入した先は、東京の神保町にある児童書のお店、ブックハウスカフェ。絵本関連の専門サービスをネットでおこなっている絵本ナビ。そして全国に実店舗を展開している、hontoネットストアと紀伊國屋書店webストアです。

それらで買い求めた新品の書籍を、都内に昔からある児童養護施設に宅急便で送らせていただきました。全部で26冊になりました。

集まった本は実に多彩で、絵本、童話、学習マンガ、小説、自伝といった、子どもたちが何度でも繰り返し楽しめそうな作品ばかりで、私が知らなかったタイトルも多くありました。フォロワーの方々に選んでもらってよかったとつくづく思いました。

企画に参加してくれたお一人の女性からは、趣味で描いているという「笑い文字」のハガキを子どもたちに渡してほしいとのお申し出があり、一緒に同封させていただきました。

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後日、お届けした施設に初めてご挨拶に伺いましたが、プライバシー保護のために、その施設名と所在地、外観をSNS上ではお伝えすることが出来ないのが残念です。

児童養護施設で生活している子どもたちは、さまざまな理由で実の親とは暮らせない子どもたち。

子どもによっては、その暮らす場所を決して親に知られてはならないという現実があります。

 

今回の企画に賛同して参加いただいた方には、あらためて感謝の気持ちでいっぱいです。施設の職員の方々もおっしゃっていましたが、お会いしたことのない方々からの、とてもあたたかい気持ちを受け取り、クリスマスのシーズンに子どもたちにお贈りすることが出来ました。

このようなささやかな企画をこれからも定期的にしていけたら、と思っています。

 

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傾聴カウンセラー 喜々津博樹

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富士の樹海を歩く

先日18日、山梨県の富士山麓青木ヶ原樹海をおとずれてきました。

樹海を訪ねた目的は、この地に自殺をしようとやって来た人に声をかけるためです。

私が富士樹海の自殺に関心を強く抱いたのは、もう10年以上前になるでしょうか、樹海での自殺者が多くなっており、地元の人たちが声かけなどの防止活動に取り組んでいる様子がNHKの番組で紹介されたのです。

その時の、自殺未遂で警察に保護されたひとりの男性の、パトカーの座席に座り、モザイク越しのうなだれた姿が目に焼きついて離れませんでした。

 

今も地元の自治体が、毎日パトロールをしているそうですが、カウンセラーとして、いのちをつなぐ、自殺の未然防止活動をしている身として、自分も現地に向かいたいと思いました。

以前に訪ねたのが2019年の年末。その後コロナが広まり出し、なかなか訪れる機会を得られずにいましたが、感染者がようやく減ってきた今、行動を起こそうと思いました。

東京からはレンタカーを借りて、中央自動車道を河口湖インターで降り、鳴沢村へ向かいます。

今回は、最初に野鳥の森公園の駐車場に車を停めて、そこから延びる遊歩道をまず歩いてみました。

静かな森の道ですが、しばらく行くと中学生の集団に何度もすれ違い、賑やかになりました。あたりは溶岩が織りなす原生林の森ですが、人が多くなると雰囲気がまったく変わります。

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1時間ほど歩いて駐車場に戻り、一路、前回も車を停めた富岳風穴に移動しました。

富岳風穴にはバス停、売店、広い駐車場があり、いわば樹海に入るゲートのような場所で、平日でも観光客の姿が見られました。

入場料を払う風穴の入口を横目に、樹海の遊歩道を進んでいきます。

しばらく歩くと、まったく人の気配はなくなり、静寂そのものの森の中を進むようになります。

私はこの雰囲気こそ、青木ヶ原樹海本来の姿なのだといつも感じます。

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あたりは苔に覆われた起伏のある溶岩台地と背の高い原生林がずっと広がっています。

この静かな一本道を、これまでどれだけの人が死のうと考え、ひとり歩いていったのだろうと思いを巡らし、立ち止まっては耳を澄ませていました。

時折、歩道を外れて森の中に足を踏み入れてみましたが、どこまでも奥に広がっている誰もいない空間に身を置くと、やはり怖くなって、引き返したくなります。

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この日はそれらしき人に出会うことはなく、駐車場に戻り、帰路は富士五湖の西湖、河口湖のほとりを走りながら、夕暮れの富士山を眺めつつ、東京に帰りました。

また季節を変えて、樹海には定期的に訪れたいと思っています。

 

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傾聴カウンセラー 喜々津博樹

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対面カウンセリング再開&料金改訂のお知らせ

この10月1日から、対面カウンセリングを久々に再開することにしました。

また、オンライン・カウンセリングについては料金を見直し、値下げすることにしました。

 

対面については、ひきこもり支援の活動においてはすでに対面での面談はおこなっていたのですが、以前カフェでおこなっていたカウンセリングは、コロナウイルスの感染予防のためにずっと休止していました。

今回の緊急事態宣言の解除を受けて、正式に対面でのセッション再開に踏み切りました。

場所は、しばらくは豊島区・池袋駅近くの静かなカフェを予定しています。

最近はレンタルスペースも増えてきているので、カウンセリングに適した個室の部屋が見つかったら、場所を替えるかもしれませんが。

カウンセリングは、クライアントと身近に向き合い、その仕草や表情、身振りにじかに触れて波動を感じることで、クライアントへの理解をより深めることが出来ます。

対面カウンセリングがカウンセリングの基本であることに異論はありませんが、ただ現状ではマスクを着用することが前提になるので、お互いの表情が見えづらいのは、非常にやりにくさも感じます。

その点、オンラインにはマスクを必要としない良さがあることに気づきました。

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オンライン・カウンセリングの長所は、場所、地域を問わず、遠方の方ともつながることが出来ること、移動時間がないこと、そして顔を出すのが苦手だったり、対面恐怖を感じている方でもカウンセリングを利用しやすいことでしょう。

今までずっと、対面とオンラインの料金を同じにしていたのですが、この対面再開を機に、オンラインは値下げをすることにしました。

オンラインにも長所があるとはいえ、クライアントをより理解するための環境は対面には劣り、音楽を機器で聴くのと生で聴くのとでは値段が変わるように、カウンセリングも対面よりは価格を下げようと判断しました。

ただカウンセリングは、オンラインでも対面でも、どちらもライブであることに変わりはないのですが。

 

そしてこれが一番重要なことですが、オンラインであれ対面であれ、カウンセラーのクライアントに対する態度、姿勢、カウンセリングの質はまったく変わらず、差などあってはいけないということです。

ただ、今回オンラインを値下げすることで、学生の方や病気で仕事に就けない方、生活保護を利用している方が、より利用しやすくなってくれたら、という思いがあります。

カウンセリングをより多くの方に身近に活用してもらうために、この秋も活動していきます。

 

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傾聴カウンセラー 喜々津博樹

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クラウドファンディングに初参加〜nopoleの挑戦

クラウドファンディング

名前を知ってはいても、なかなか機会をつかめていませんでしたが、初めて出資をする機会がおとずれました。

私が支援しているのは、nopoleというFTMのためのセクシャルウェルネスブランドのプロジェクトで、私のカウンセリングをご利用されているクライアントの方から教えていただきました。

クラウドファンディングのプラットフォームは、MOTION GALLERYというサイト。

nopoleが立ち上げたプロジェクトとは、セクシャルマイノリティでも性を楽しめるアイテムの制作です。

女性の体で生まれてきたけれど、男性として生きることを望むFTM(Female to Male)の人たちは、自分の体にコンプレックスを感じたり、パートナーとのセックスに悩みを感じている人が多くいるといいます。

 

FTMは体を男性にするための治療や手術をする人もいますが、男性器の形成手術をするのはハードル、リスクがともに高く、パートナーとのセックスの時、挿入ができません。

相手が満足しているのか不安になったり、自分の体にコンプレックスを感じ、自分自身も満足ができないと悩んでいます。

またパートナーの人は、既製のおもちゃを使用されると、サイズが合わずに痛みを感じ、でも相手を傷つけたくないから言い出せなかったり、申し訳ないという気持ちになるといいます。

 

そのお互いの悩みを解決するために開発されたのが、挿入しなくても一緒に気持ちよくなれる、球体型のセクシャル・アイテムです。

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私がこのプロジェクトに賛同する理由は、nopoleのサイトにも書いてあるように、大切な人と性を通じて心も身体もつながり、幸せを感じることがコンセプトになっていることです。

大量生産には馴染まず、既存のメーカーが作らないのなら、自分たち当事者で知恵を絞り、商品開発をして、広く世間に知ってもらう活動をおこなっていく。

そんなFTMの人たちの真摯な思いと夢、情熱を強く感じました。

そして、私がカウンセリングを通じて知り合った、身近な方の実体験の声も大きなきっかけになっています。

パートナーと心から愛し合いたい、幸せな時間を大切に過ごしたいという純粋で温かい気持ちが、まっすぐに伝わってきたのです。

クラウドファンディングの期限は、9月13日まで。まだ時間があります。

nopoleの人たちの挑戦を応援していきたいと思います。

クラウドファンディング・サイト

https://motion-gallery.net/projects/nopole

クラウドファンディングは9月13日、ネクストゴールを達成して終了しました。

 

カウンセリングサロンぱすてる

傾聴カウンセラー 喜々津博樹

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心を大切にするということ~オンライントーク再録

先日8月7日、オンライントークライブというZoomでのイベントに初めてスピーカーとして参加しました。

イベントのタイトルは「心を大切にするということ」。

私は「いのち」について約30分間お話したのですが、その時の内容を記録しておきたい、イベントに参加出来なかった方々にもお伝えしたいと思い、当日の原稿を元に文章を起こしてみました。

ライブの雰囲気を出すために、話し口調の文体にして、内容を忠実に再現したつもりです。

イベントを視聴いただいた方にもテープを再生するような感覚で、ご覧いただけたらと思います。

 

前口上

はじめまして。ぱすてるの喜々津博樹と申します。

私はカウンセラーとして、ひきこもりの人たちの支援を中心に活動しています。

今年の1月までは、ボランティアでカウンセリングの活動をしていまして、ツイッターを中心にして発信をしていましたので、今日ご参加している方で、もしかしたら、以前お話をしたことのある方が、いらっしゃるかもしれません。

今日は、私は「いのち」というテーマでお話をさせていただきます。

いのち、というととても大きなテーマで、とても30分という時間ではまとめられないのですが、私がカウンセリングの勉強を始めたころ、いのちについて考えさせられる、とても大きな事件がありまして、今日はその事件をもとに、特に自殺とうつ病の問題についてお話しながら、みなさんとお時間を共有できたら、と思っております。

産業カウンセラー

まず最初に、私は資格としては、産業カウンセラーという資格を持っています。

産業カウンセラーという名前を聞いたことはありますでしょうか?民間の資格ですが、主に産業・労働分野、つまり職場や働く環境でのメンタルヘルス対策を目的としています。

産業カウンセラーには2つ特徴があり、1つは、働きながら講座を受けて取れる資格であり、大学院などに行かなくてもいいことです。

2つめは、講座の中で傾聴の実技にかなり力を入れており、100時間以上の実技の講習があります。

その養成講座に通ってカウンセリングの勉強をしたのですが、その頃に2つのとても大きなショックを受ける事件がありました。

ひとつは、2015年の12月25日、クリスマスの日に、当時電通の社員だった高橋まつりさんが、会社の寮から飛び降りて、24歳で自ら命を絶った事件です。

もうひとつは、2017年の夏から秋にかけて神奈川県の座間市で起きた殺人事件です。

犯人の男が、若者の男女9人を自分のアパートで殺害した、きわめて残酷な事件でした。

この2つの事件に共通するのは、本来なら、自分で生きていく力があった人たちの尊い命が、あまりにも理不尽な理由で奪われてしまった、という事実です。

これらの事件について時間をかけて話したいですけれど、今日は時間の関係で、高橋まつりさんの事件に焦点を絞って、お話をさせていただきます。

高橋まつりさん

高橋まつりさんについては、お母様の高橋幸美さんが、この事件を担当された弁護士の川人博さんと一緒に、1冊のとても素晴らしい本を残されています。

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『過労死ゼロの社会を ー高橋まつりさんはなぜ亡くなったのかー』

高橋幸美、川人博・著  連合出版

この本に事件の経緯が大変くわしく書かれており、また高橋まつりさんの短い半生について、お母様が手記を綴られていて、ぜひ読んでいただきたい本なのですが、あいにくこの本が今、絶版になっているのです。

このような本が絶版になってしまう社会とは何なのだろう、と考えてしまいますが…

お母様によると、今度改訂版が出る予定とのことです。

追記:2022年2月に、タイトル・版元が変わり、内容も追加されて、新装版が発売されました。

『過労死・ハラスメントのない社会を 電通高橋事件と現在』

高橋幸美、川人博・著 日本評論社

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高橋まつりさんの事件をなぜ今日お話するかというと、この事件は今の日本社会、企業という組織の問題点や、いのちについて考えさせられる、実にたくさんの教訓を投げかけているからです。

すでに詳しくご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、あらためて今日はこの事件を少しふりかえりたいと思います。

まつりさんの自殺原因

まつりさんが亡くなった大きな要因が、長時間労働、とくに連日連夜、深夜にまでおよんだ残業です。

そして電通という会社は、まつりさんに対して残業時間を短く申告するように指示していまして、労働時間の事実の隠ぺいをおこなっていました。

そして、長時間労働だけでなく、まつりさんに対して上司による、パワハラ、セクハラがあったことがわかっています。暴言によるハラスメントですね。

さらに、この会社には社内行事がたくさんあるようで、その準備などを新入社員のまつりさんがしなければならない。毎日残業をしていますから、結局休日にやらざるを得ない。そういったことを当然のように新入社員にさせるという会社の慣習、風土がありました。

そして、ここからがとても重要な事実なのですが、まつりさんが自殺をしたのは、クリスマスの12月25日ですが、11月の上旬には、うつ病を発症していたのです。これは事件のあとになってわかりました。

うつ病という病い

うつ病という病気の何がおそろしいかといえば、希死念慮が湧いてくる、ということです。判断能力や思考力が低下して、もう死ぬしかないと思ってしまう、自殺の衝動が生まれてしまうことですね。

まつりさんは、過酷な長時間労働によって睡眠時間が極端に減ってしまい、それによる心身への負担がとてつもなく大きくなってしまいました。

そこにさらにハラスメントや余計な業務が重なり、三重、四重ものストレスがかかっていったのです。

電通は歴史の長い大企業であるにも関わらず、会社のメンタルヘルス対策や労働組合(まつりさんも組合員でした)もほとんど機能していなかったようです。

まつりさんは社内で上司に相談したこともあったそうですが、適切な対応はとられなかったのです。

うつ病と自殺

うつ病を発症すると自殺の危険性が高くなりますが、このうつ病は誰にでも起こり得るといわれています。

まつりさんは、決してストレス耐性の弱い人ではなかった、東京大学を卒業されて、むしろ強い精神力でそれまで生きてきた方です。

自殺は、個人の意志や頑張りではどうにもならない状態に追い込まれる、追い込まれた末の死です。

しかし、自殺もうつ病も、これは防ごうと思えば防げる問題でもあるのです。

まつりさんは、会社の体質の問題や上司の関わり方によって、追い詰められてしまった。本来なら病気を防げたはずなのに、それがなされなかった、尊いいのちが失われて、とりかえしのつかないことになってしまいました。

まつりさんの状態を見て、「休みなさい」と言う上司が何故いなかったのか、と。

私たちに出来ること

自殺やうつになるのを防ぐためにどうしたらよいのか。

企業をはじめとする社会の問題や仕組みを改善することももちろん必要なことですが、私が今日お伝えしたいのは、まわりの関わり方です。

うつ病などの症状のある人に対して、その発しているサインやSOSに身近な人が気づいたり、声をかけたりすることがとても大事だということですね。

そして、苦しんでいる本人が助けを求めたり、休んだり、休められる状態、環境が必要ということですね。

そのためには、病気や症状というものに対して正しい知識をもつ、理解をする、関心を持つということがとても大切だと思います。

今は情報が溢れていますが、情報を持つことも大事かもしれないですが、情報だけでなく、正しい知識を持つということですね。

情報はどんどん古くなってしまう、変わってしまいますが、知識はそんなすぐには古くなったり、変わったりしません。知識も時代が経つにつれて変わってはいきますが、ずっと変わらないものもあります。

正しい知識を持つことで、冷静な判断が出来て、幅広い知識を持つことにより、視野が広がります。

知識を得るためには、やはり本を読むのがいいと思います。ネットでも知識は得られますが、ネットで得る知識は断片的になりがちです。本は、体系的な知識を得ることが出来て、いつでも手に取って、何度でも読み返すことが出来ます。

本をお勧めするのは、私が昔、出版社に勤めていたから、というわけではありませんが…

予防する〜いのちをつなぐ

私たちのいのちは、一度失ったら二度と戻ってはきません。

いのちは、予防をすることで守ることができます。私がおこなっているカウンセリングは、そのいのちを守る、いのちをつなぐための、予防のためのカウンセリングでもあります。

病気になってしまったら、治療をしなければならない。その治療に長い時間とお金を費やすことになってしまいます。病む前に話を聴いてもらったり、予防のひとつとして、カウンセリングを利用してくれたら、と思います。

ただ、カウンセリングは保険が適用されないので、決して安くはありません。

カウンセリングとは違いますが、最近はお話を聴く傾聴の活動をSNSを通じておこなっている人たちもいますので、利用してみるのもいいと思います。

病気にならないように予防をする、それがいのちを守る、つなぐことになり、それが今日のトークテーマである「心を大切にするということ」になるのではないかと思います。

最後に、数字の話

せっかくの機会なので、数字の話をさせてください。

自殺の話をしましたが、日本で年間、何人ぐらいの人が自殺で亡くなっているかご存知でしょうか?

2020年は、国内で21,081人の方が自殺しています。1日あたり60人ちかくの人が自殺で毎日亡くなっているのです。

ちなみに東日本大震災の死者・行方不明者の合計は何人かご存知でしょうか。

18,425人です。

1年間に自殺で亡くなる方は、東日本大震災で亡くなった方々よりも多いのです。

日本の年間の交通事故死者は、昨年何人だったかご存知でしょうか?

2,839人です。自殺者はその7倍以上ということになりますね。

私が運転免許をとった時、30年前ですが、教習所の教官の言葉を今もよく覚えていますが、その時教えられた交通事故死者数は、1万人を超えていました。交通事故の死者はどんどん減っていますね。理由がいくつかあり、違反に対する厳罰化や車の性能が上がったことなどが挙げられます。

これらの数字は、私がいつも意識している数字です。数字も知識であり、数字で人のいのちは計り知れませんが、自殺者が1人でも減ってほしい、できるならゼロになってほしい、それぐらいの気持ちで活動をしていきたいと思います。

最後にお伝えしたい数字があります。

日本のひきこもりの人たちの数です。

15歳から64歳までのひきこもりの人たちは、国内におよそ115万人といわれています。

今日はお忙しい中、お話を聴いてくださり、どうもありがとうごさいました。

2021年8月7日(土)

心の保健室・オンライントークライブより。

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カウンセリングサロンぱすてる

傾聴カウンセラー 喜々津博樹

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